江戸甘味噌 — 家康が江戸で生んだ濃褐色甘味噌の特徴とレシピ
米麹をたっぷり使い短期高温熟成で仕込む江戸甘味噌。家康の江戸入府にさかのぼる起源と戦後の復活、代表的な蔵元、家庭で作る田楽のレシピをまとめました。
家康が江戸入府後に作らせたとされる江戸甘味噌は、米麹をたっぷり使う濃い赤褐色の甘味噌です。江戸時代には江戸の味噌需要の6割以上を占めるほど親しまれ、田楽やどぜう鍋など下町料理を支えてきました。戦時統制で一度途絶えたものの、戦後に復活した珍しい歴史を持ちます。江戸甘味噌の特徴と、家庭で作るレシピを紹介します。
江戸甘味噌とは
江戸甘味噌は、東京で作られる濃い赤褐色の甘口米味噌です。1590年に徳川家康が江戸に入府した頃にさかのぼるとされ、三河の八丁味噌の旨味と京都の白味噌の甘さを兼ね備える味噌として開発された経緯が伝えられています。江戸時代には江戸の味噌需要の6割以上を占めて田楽・どぜう鍋など江戸料理を支えましたが、戦時中の食糧統制で米麹の大量使用が禁じられて製造が途絶え、戦後の1951年に生産が再開されました。2003年には東京都地域特産品(Eマーク)に認証されています。江戸甘味噌には次のような特徴があります。
米麹を大豆の2倍使う — 大豆1に対して米麹2(麹歩合15割)が標準。米麹由来の糖化が強く、強い甘みが生まれる。
塩分5〜6%と低い — 西京味噌に近い低塩タイプ。長期保存より風味を優先した仕立て。
短期かつ高温熟成 — 熟成期間は10日〜2週間ほどと短く、仕込み温度を50℃前後に高めて発酵を急ぐ。
濃い赤褐色〜黒褐色 — 大豆の長時間蒸し(留釜)によるメイラード反応で、西京味噌のような白系ではなく深い色に仕上がる。
強い甘みと米麹のコク — 砂糖を使わずに米麹由来の糖で甘みを出すため、コクのある独特の甘さが特徴。
代表的な江戸甘味噌の蔵元
東京で江戸甘味噌を仕込み続ける蔵元を挙げます。
ちくま(江東区佐賀) — 1688年(元禄初年)創業、深川永代橋袂で300年以上続く老舗。宮内庁にも納入し、歌舞伎『四千両小判梅葉』にも「味噌はちくまに限るのう」と登場する江戸の名店。
あぶまた味噌(中野区) — 1885年(明治18年)創業。六代130年余にわたり江戸甘味噌を仕込み、東京都地域特産品認証(Eマーク)を取得。みそソムリエ資格者が在籍する醸造元。
日出味噌醸造元(港区海岸) — 江戸甘味噌を主力に、みそピー・おにぎり味噌・冷や汁の素など発酵食品を展開する東京の蔵元。
レシピ例 — 茄子の味噌田楽
江戸甘味噌のコクをもっとも素直に味わえるのが、田楽味噌をたっぷり使う田楽です。4人分。
茄子 4本(または木綿豆腐 1丁、こんにゃく 1枚)
田楽味噌: 江戸甘味噌 大さじ4、みりん 大さじ2、砂糖 小さじ1、水 大さじ2
白ごま・木の芽 適量
田楽味噌の材料を小鍋に入れ、弱火でかき混ぜながら練ります。とろっとして艶が出たら火を止めます(練りすぎると焦げるので注意)。茄子は縦半分に切って格子状に切り込みを入れ、油を塗ってグリルで焼きます。火が通ったら焼き面に田楽味噌を塗り、もう一度さっと炙って香ばしさを出します。器に盛って白ごまや木の芽を散らせば完成。江戸甘味噌の濃いコクと甘みで、茄子の旨味が引き立ちます。
もう一歩先へ
江戸甘味噌は田楽のほか、どぜう鍋(柳川鍋)やどじょう汁といった江戸の代表料理に使われてきました。同じ甘口でも淡色の西京味噌とは色も風味も対照的で、江戸の濃い味付けの料理に合うのが特徴です。普段の味噌汁に少量加えて、コクと甘みを足す使い方も家庭で楽しめます。
このサイトの味噌の一覧では、江戸甘味噌を含む各製造元の商品を見比べられます。
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