さしすせそ.com
記事一覧へ

一番出汁と二番出汁の違いと使い分け

一番出汁は澄んだ香りで吸い物や茶碗蒸しに、二番出汁は濃い旨味で煮物や味噌汁に。同じ昆布と鰹節から二度取り分ける合理的な仕組みと、家庭で再現できる分量・時間の目安、関西と関東の出汁文化の違いまでをまとめます。

木下さおり公開 2026/5/15

和食の出汁は、一度の素材で二段階に取り分けるのが基本とされています。最初に取る「一番出汁」と、その出し殻から取る「二番出汁」。同じ昆布と鰹節を使いながら、香り重視の上品な出汁と、旨味重視の力強い出汁を作り分ける仕組みです。それぞれの特徴と取り方、料理での使い分けをまとめます。

一番出汁と二番出汁の違い

一番出汁は、水に昆布を浸して旨味を引き出したあと、沸騰直前に昆布を引き上げ、火を止めてから削り節を入れて短時間で漉した出汁です。にんべんの解説によれば、削り節を入れて1〜2分置いてから漉すのが目安とされています。澄んだ琥珀色で香りが立ち、雑味が少ないのが特徴です。

二番出汁は、一番出汁を取ったあとの昆布と削り節(だしがら)を再び水から煮出し、最後に追い鰹を加えて取る出汁です。辻調理師専門学校の解説でも、だしがらを水から火にかけて煮出し、仕上げに削り節を足す手順が紹介されています。色は濃く、香りは弱まる代わりに旨味が凝縮されます。

つまり、一番出汁は「香り」、二番出汁は「旨味の濃さ」を担います。一度の素材を二度使い切るこの流れは、食材を無駄にしない合理的な仕組みでもあります。

一番出汁の取り方

にんべんが公開している家庭向けの分量を目安にした手順です。

  • 水1リットルに昆布10g、削り節(鰹節)30gを用意します。

  • 鍋に水と昆布を入れ、30分〜1時間ほど浸します(時間がないときは弱火でゆっくり加熱しても構いません)。

  • 沸騰直前(鍋肌に小さな泡が出る頃)に昆布を引き上げます。

  • 一度沸騰させたら火を止め、削り節を全量入れて1〜2分置きます。

  • キッチンペーパーやさらしを敷いたザルで静かに漉します。だしがらは絞らずに残しておきます(絞るとえぐみが出るためです)。

仕上がりは澄んだ琥珀色で、ふわりと鰹の香りが立ちます。

二番出汁の取り方

一番出汁で残しただしがし(昆布と削り節)をそのまま使います。

  • 鍋にだしがらと水500mlを入れ、火にかけます。

  • 沸騰したら弱火に落とし、3〜5分煮出します。アクが出たら取り除きます。

  • 火を止め、追い鰹として削り節を4〜5g加え、1〜2分置きます。

  • ザルで漉します。最後にだしがらを軽く押さえる程度に留め、強く絞らないようにします。

色は濃い茶色、香りは控えめですが、煮込み料理の下地として十分な厚みのある旨味が出ます。

使い分け

一番出汁と二番出汁は、料理が「出汁の香り」を主役にするか、「素材と調味料の味」を支える土台にするかで使い分けます。

  • 一番出汁が向く料理: お吸い物、茶碗蒸し、出汁巻き卵、椀物の上澄みなど、出汁そのものを味わう料理。

  • 二番出汁が向く料理: 煮物、味噌汁、うどん・そばのつゆ、炊き込みご飯、鍋物など、調味料や具材と一緒に煮込む料理。

味噌汁については「一番出汁でも二番出汁でも良い」とする解説が多く、家庭の好みで選んで差し支えありません。来客時の吸い物は一番出汁、日常の煮物は二番出汁、という具合に使い分けると、一度取った素材を最後まで活かせます。

地域差にも触れておきます。関西広域連合の「関西のだし文化」では、北前船による昆布の流入を背景に、関西で昆布だしを中心とした料理文化が発達したことが紹介されています。一方で関東は鰹節を効かせた濃い味付けの煮物文化と結びついて語られることが多く、同じ「出汁」でも素材の比重や濃淡に地域の傾向があるとされています。

もう一歩先へ

出汁は素材の質と扱い方で表情が変わります。鰹節は削りたてに近いものほど香りが立ち、昆布は産地や種類(真昆布・利尻・羅臼・日高など)で旨味の輪郭が変わります。市販のだしパックを使う場合でも、一番出汁にあたる短時間抽出と、二番出汁にあたる煮出しを意識して使い分けると、料理ごとの仕上がりが整いやすくなります。まずは家庭にある昆布と鰹節で、一回分を二段階に取り分けるところから試してみてください。

この記事に関連する商品

関連記事

焼津の鰹節 — 静岡が育てた日本一の鰹節産地

静岡県焼津市は鹿児島県枕崎市・指宿市と並ぶ鰹節の三大産地で、全国の生産量の約3割を占めます。弥生時代の遺跡からカツオの骨が出土した港町の歴史と、火入れを15から16回重ねる焙乾(ばいかん)技術を、一次資料からたどります。

北海道の昆布産地 — 真昆布・利尻・羅臼・日高の海

国内昆布の約95%を産する北海道。道南の真昆布、道北の利尻、道東の羅臼、太平洋岸の日高。流れる海流と栄養塩の違いが、出汁の透明感や香りを分けています。北前船が運んだ昆布ロードと、関西のだし文化の起源までを辿ります。

枕崎・指宿の鰹節 — 鹿児島が育てた本枯節の名産地

鹿児島県の枕崎市と指宿市山川は、国内有数の鰹節産地です。300年を超える歴史を持つ枕崎、明治期に始まった山川。本枯節(かびづけを重ねた最高級品)の生産で全国を牽引する2つの港町を、一次情報をもとに整理します。

瀬戸内・伊吹島のいりこ — 讃岐うどんを支える煮干しの島

香川県観音寺市の沖合、燧灘に浮かぶ伊吹島はカタクチイワシ漁と煮干し加工で知られます。漁場と加工場の近さを活かした島内一貫生産が、讃岐うどんの出汁を支える「伊吹いりこ」の品質を生み出してきました。