鰹節の種類と選び方 — 本枯節・荒節・血合抜きの違い
鰹節は荒節・枯節・本枯節という製法の段階で味わいが変わり、血合の有無で香りやだしの澄み方も大きく変わります。煮熟から焙乾、カビ付けまでの工程と、料理ごとの選び方を製造元の解説をもとに整理しました。
鰹節は、削る前の固い節の状態で「荒節」「枯節」「本枯節」と呼び分けられます。さらに同じ鰹節でも、赤黒い血合(ちあい)部分を残すか除くかで、だしの香りや色合いが変わります。製造工程と用途を整理しておくと、料理に合う鰹節を選びやすくなります。
鰹節ができるまで
鰹節は、生の鰹を節の形に切り分けたあと、いくつもの工程を重ねてつくられます。にんべんの解説によれば、本枯鰹節の完成までには、およそ150〜180日を要します。
煮熟(しゃじゅく): 籠に並べた鰹を75〜98℃の湯で60〜90分ほど煮ます。沸騰させないのは、泡で節が崩れるのを防ぐためです。
骨抜き: 冷ました節を水に浸し、皮・ウロコ・皮下脂肪を取り除き、手作業で骨を一本ずつ抜きます。
焙乾(ばいかん): 薪で燻しながら乾燥させます。最初の「一番火」は水分を抜く工程で、その後「十〜十五番火」まで繰り返します。
カビ付けと日乾: 焙乾を終えた節の表面を削って形を整え、優良な鰹節カビを噴霧して室(むろ)に入れます。その後、天日干しとカビ払いを交互に3〜6回繰り返します。
荒節と枯節・本枯節の違い
どこまで工程を進めるかによって呼び名が変わります。
荒節(あらぶし): 焙乾までで仕上げた鰹節です。完成まで約1か月。表面はタールで黒っぽく、燻香が強く、市販の「花かつお」や削り節パックの多くに使われます。
枯節(かれぶし): 荒節の表面を削り、カビ付けと天日干しを2回以上繰り返したものです。カビが余分な脂肪と水分を分解するため、魚臭さやえぐみが和らぎます。
本枯節(ほんかれぶし): 枯節の中でもカビ付けを多く重ねたものを指します。にんべんでは、カビ付けを4回以上繰り返したものを本枯鰹節と定義しています。完成まで3〜5か月かかり、だしは澄んだ琥珀色に仕上がります。
血合抜きと血合入り
鰹の身には、背側と腹側の境目に赤黒い「血合」と呼ばれる部分があります。削り節を作る段階でこの血合を残すか取り除くかで、味わいの方向性が分かれます。
血合入り: 鰹本来のコクと香りが強く出ます。一方で、独特の魚臭さや渋み、だしの濁りの原因にもなります。味噌汁、煮物、麺つゆなど、味の濃い料理に向きます。
血合抜き: 血合を除いて削った節です。雑味が少なく、淡いピンク色の花になり、だしも澄んだ色に仕上がります。お吸い物、茶わん蒸し、出汁巻き卵など、香りと色を活かしたい料理に向きます。
用途別の選び方
味噌汁・煮物・うどんつゆ: 荒節の血合入り削り節。香りが立ち、コクのある一番だしが取れます。
おひたし・冷奴・お好み焼き: 荒節の花かつおをそのまま振りかけます。燻香が料理の輪郭を引き締めます。
お吸い物・茶わん蒸し・京風の煮物: 本枯節の血合抜き。澄んだだしと上品な香りが料理を邪魔しません。
毎日のだし取りを手軽に: 枯節の削り節パック。荒節より雑味が少なく、本枯節より手に入りやすい価格帯です。
もう一歩先へ
鰹節の主産地は、静岡県焼津と鹿児島県枕崎・指宿です。同じ本枯節でも、産地や製造元によって焙乾に使う薪の種類、カビ付けの回数、熟成期間が異なり、香りの輪郭が変わります。まずは普段使いの削り節を一段上げてみる、お吸い物のときだけ血合抜きを使ってみる、といった小さな置き換えから始めると、だしの違いを体感しやすくなります。
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