土佐宗田節 — 高知・土佐清水が支える濃いだし
高知県土佐清水市は宗田節の全国生産量の大部分を担う産地です。原料の宗田鰹(マルソウダ)を煮熟と焙乾でじっくり仕上げ、鰹節より色も香りも濃いだしを生みます。関東のそばつゆを支える主役として、家庭の麺つゆにも欠かせない節です。
高知県の南西端、太平洋に突き出した土佐清水市。ここは宗田節(そうだぶし)の一大産地として知られ、全国生産量の大部分を担っています。鰹節より色も香りも濃いだしは、関東のそばつゆを長く支えてきました。家庭の麺つゆ作りでも、宗田節を一握り加えるだけでだしの厚みが一段増します。
土佐清水と宗田節
土佐清水市は宗田節の生産量で全国一を誇り、シェアの大部分を占めると市の公式情報に記されています。市内には「節納屋(ふしなや)」と呼ばれる加工場が点在し、ウバメガシなどの天然木で節を燻す昔ながらの手仕事が今も受け継がれています。宗田節づくりが基幹産業として根づいたのは昭和30年(1955年)頃からで、紀州から伝わった鰹漁の系譜を引き継ぎながら、土地の風土と魚種に合わせて発展してきました。
原料の宗田鰹
原料となるのは「宗田鰹(そうだがつお)」、つまりソウダガツオ属の魚です。ソウダガツオには「マルソウダ」と「ヒラソウダ」の2種があり、宗田節に使われるのは主にマルソウダ。寸胴型で身に脂が少なく、節にしたときに固く締まるためです。高知県ではマルソウダを「メジカ」とも呼び、土佐清水市や室戸市の沖で漁獲されます。マルソウダは血合いが大きく生食には向きませんが、その血合いこそが濃いだしの正体でもあります。
加工と特徴
製造はおおむね10日ほどかけて進みます。まず大きさを揃えた魚を煮籠(にかご)に並べる「籠立て」、約1時間の「煮熟(しゃじゅく)」、頭と内臓・中骨を職人の手で取り除く「セイロ取り」、約1週間の「焙乾(ばいかん)」で水分を飛ばしながら香りを移し、最後に半日ほどの「天日干し」で仕上げます。焙乾はウバメガシなどの堅木でじっくり燻すのが土佐清水の流儀。出来上がった節は鰹節より色が濃く、香りも強く、煮出すとだしに琥珀色のコクが立ち上がります。
そばつゆの主役として
濃口醤油と厚削りで合わせる関東風のそばつゆは、宗田節の独壇場です。鰹節だけでは出にくい褐色の濃さと、後味に残る厚みのある旨み。これを引き出すために、宗田節の厚削りを鰹節や鯖節と組み合わせるのが、東京の老舗そば店の定番でもあります。1リットルのだしに対して厚削りを40g以上、抽出温度と時間を細かく管理しながら、香りと旨みの両立を狙う仕立て方が知られています。逆に上品な吸い物には鰹節を主役にし、宗田節は使わないか少量に留める—この使い分けが、節の世界の面白さでもあります。
もう一歩先へ
家庭で試すなら、市販の麺つゆに削り宗田節をひとつまみ加えて温め直すだけでも違いが分かります。最近は宗田節を使っただし醤油や、ボトル入りの「だし醤油」も土佐清水の製造元から数多く出ています。冷奴や卵かけご飯にひと垂らしすれば、磯と燻香の重なりがそのまま立ち上がる—そんな日常的な使い方も、産地の現場が提案する宗田節の楽しみ方です。
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