龍野の淡口醤油 — 関西の出汁文化が育てた淡い色の醤油の特徴とレシピ
兵庫県たつの市は淡口(うすくち)醤油の発祥地です。1666年の誕生から350年以上、揖保川のやわらかな水と播州の素材が育てた色も香りも控えめな醤油は、関西の出汁料理を支える調味料として今も使われ続けています。
兵庫県たつの市は、色の淡い「淡口(うすくち)醤油」が生まれた土地です。揖保川のやわらかな水と播州平野の大豆・小麦、赤穂の塩が結びついて、色も香りも控えめな醤油が育ちました。京都・大阪の出汁料理を陰で支えてきた、関西の食卓に欠かせない一本です。
龍野の淡口とは
龍野(現在のたつの市)で1666年に円尾孫右衛門が淡口醤油を作り出したと伝えられ、1672年には龍野藩主の脇坂安政が藩の産業として奨励しました。揖保川のやわらかな水、赤穂の塩、播州平野の大豆と小麦という素材に恵まれ、飾磨港からの船便で関西方面へ出荷される流通網が産地を育てました。色は濃口より淡く、塩分はやや高め。まろやかさを出すために甘酒や米を加える蔵もあります。令和2年時点で龍野醤油協同組合には9社が加盟し、年産は約2万8000キロリットル。地理的表示(GI)としての登録は確認できていません。
1666年に淡口醤油が誕生、1672年には龍野藩が産業として後押しした。
やわらかな揖保川の水・赤穂の塩・播州の大豆と小麦で仕込む。
色を淡く保つため、加熱(火入れ)や熟成を控えめにする。
まろやかさを出すために甘酒や米を加える蔵も多い。
京料理の出汁文化と結びついて発達してきた。
代表的な蔵元
たつの市内で淡口醤油を造る蔵元のうち、規模と歴史の異なる3社を紹介します。
ヒガシマル醤油 — 浅井醤油と菊一醤油が1942年に合同して龍野醤油株式会社を設立し、後にヒガシマル醤油へ改称。たつの市を代表する製造元。
末廣醤油 — 1879年(明治12年)創業。揖保川の伏流水を使い、国産大豆と小麦による天然醸造を続けている。2017年にカネヰ醤油の事業も引き継いだ。
矢木醤油 — 1906年創業。料亭向けの業務用や、家庭向けつゆ・たれを手掛けている。
レシピ例 — 京風かきたまうどん
淡口醤油の透き通った色を活かせる、定番の一杯です。鍋に水400mlと昆布5g、削り節10gで出汁をとり、淡口醤油 大さじ2、みりん 大さじ1、塩 少々で味を調えます。茹でたうどん1玉を温めて出汁を張り、溶き卵1個を細く回し入れて火を止めます。刻みねぎと生姜のすりおろしを添えれば完成。澄んだ琥珀色の汁から、出汁の香りが立ち上がります。
もう一歩先へ
淡口醤油は色が薄いぶん、塩分は濃口より少し高めです。使う量は濃口の8割を目安に、お吸い物・炊き合わせ・茶碗蒸しなど素材の色を活かす料理から試すと違いが分かります。たつの市には「うすくち龍野醤油資料館」があり、仕込みの道具や工程を展示で見学できます。
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