山口・柳井の再仕込み醤油 — 二度仕込みで生まれる甘露醤油の特徴と使い方
山口県柳井市で1780年代に生まれた甘露醤油は、一度搾った醤油でもう一度仕込む「再仕込み醤油」の代表です。生まれた経緯、いまも造り続ける蔵元、刺身や卵かけご飯での使い方をまとめます。
山口県柳井市は、瀬戸内海に面した港町です。江戸時代から醤油づくりが盛んな土地として知られてきました。なかでも「甘露醤油」と呼ばれる再仕込み醤油は、1780年代の柳井で生まれたとされ、いまも複数の蔵元が二度仕込みの製法を守り続けています。
柳井の再仕込み醤油とは
JAS規格では、しょうゆを「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5つに分けています。再仕込み醤油は、もろみ(発酵中の混合物)を仕込むときに、塩水ではなく一度搾った生揚げ醤油(きあげしょうゆ:絞ったままの加熱前の醤油)を使い、二度目の仕込みを行う方法です。柳井で生まれた甘露醤油はその代表で、1781〜1789年(江戸時代後期)に高田伝兵衛が考え出しました。岩国藩主の吉川公に献上した際に「甘露、甘露」とほめられたことが、名前の由来と伝わります。現在も複数の蔵元が地域の特産品として製造を続けています。
塩水の代わりに生揚げ醤油でもろみを仕込む、二度仕込みの製法です。
熟成は2年以上かかり、ふつうの醤油の倍以上の手間と原料が必要です。
色は黒褐色で、粘りがやや強く、旨味と甘み、香りがぎゅっと詰まります。
江戸時代の柳井津商人の船(廻船:港を巡る貨物船)で各地に運ばれ、地域の名産になりました。
山陰から北九州にかけても、再仕込み醤油を使う食文化が広がっています。
代表的な蔵元
柳井市内で再仕込み醤油を造り続ける蔵元を紹介します。
佐川醤油店 — 1830年(天保元年)創業の製造元です。柳井市柳井で杉の30石桶と琴石山系の伏流水を使い、甘露醤油を仕込んでいます。蔵は甘露醤油資料館として公開されています。
重枝醤油醸造場 — 柳井津に蔵を構える製造元で、屋号はマルヨシです。甘露醤油のほか、もろみや味噌も造っています。
レシピ例 — 甘露醤油の卵かけご飯
再仕込み醤油は、火を通さずそのまま使う料理によく合います。卵かけご飯は、その良さを引き出しやすい一皿です。炊きたてのご飯1膳に卵1個を割り入れ、甘露醤油を小さじ1ほど回しかけて、全体を混ぜます。とろみのある醤油が卵黄に絡み、塩気よりも旨味と香りが先に出てきます。刻み海苔や白ごまを添えると、香りがさらに広がります。冷奴、刺身、寿司にも、少量で十分です。
もう一歩先へ
柳井市内の甘露醤油資料館では、再仕込みの工程を実際に見学できます。ふつうのこいくち醤油と比べながら使うと、甘露醤油の役割がつかみやすくなります。煮物や炒め物にはこいくちを、仕上げや「つける・かける」用途には甘露醤油を、と使い分けるのが手堅い選び方です。
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