銚子の醤油 — 利根川河口から江戸へ運ばれた濃口を支えた港町の蔵元とレシピ
千葉県銚子市は、利根川河口の温暖な気候と江戸への船便を背景に醤油づくりが育った濃口の産地です。1616年創業のヒゲタ、1645年創業のヤマサに加え、銚子山十・小倉醤油などの蔵元と、地元の魚に合うレシピを紹介します。
千葉県銚子市は、利根川が太平洋へ注ぐ河口に開けた港町で、江戸時代初期から続く濃口醤油の産地です。野田と並んで関東の濃口を支える中心地で、今もヤマサ・ヒゲタを中心に複数の蔵元が醤油を造っています。
銚子の醤油とは
銚子の醤油づくりは、1616年(江戸時代初期)に田中玄蕃が、摂津西宮(現・兵庫県西宮市)の酒造家にすすめられて溜醤油(たまりじょうゆ)を造り始めたのが始まりです。1645年には、紀州広村(現・和歌山県広川町)から移ってきた濱口儀兵衛が加わり、産地としての形ができていきました。1654年に利根川の流れを東へ付け替える工事(利根川東遷)が進んでからは、河口の銚子から江戸へ船で運ぶ流通網が整い、江戸の食文化を支える濃口醤油の供給地として発展します。元禄期(17世紀末)には小麦と米麹を使う改良が進み、今の関東濃口の原型ができました。GI(地理的表示、産地を国が認証する制度)への登録は確認できていません。
利根川の河口にあり、船で江戸へ大量に運んできた歴史があります。
沖合で黒潮と寒流が交わる海沿いの気候のため、夏と冬の気温差が小さく、麹菌や酵母が働きやすい環境です。
大豆・小麦・食塩を原料とする本醸造(添加物に頼らない伝統的な造り方)の濃口が中心で、刺身・煮物・佃煮など江戸前の料理に合わせやすい味わいです。
大手の蔵から、木桶で自然に発酵させる中小の蔵、業務用のたれを専門に造る蔵まで、いろいろなタイプの作り手がそろっています。
大豆と大麦の麹を熟成させた「ひ志お(醤)」のような、そのまま食べられる発酵調味料の文化も受け継がれています。
代表的な蔵元
銚子市内で醤油を造っている主な蔵元を紹介します。
ヤマサ醤油 — 1645年創業。紀州広村から移ってきた濱口儀兵衛を初代とし、12代以上にわたって銚子で濃口醤油を造り続けています。
ヒゲタ醤油 — 1616年創業。田中玄蕃が、摂津西宮の真宜九郎右衛門のすすめで溜醤油を造り始めた、関東で最も古いとされる醤油蔵の流れをくみます。
銚子山十 — 1630年創業。大豆と大麦の麹を1年以上熟成させた「ひ志お(醤)」を受け継ぐ、銚子中央町の製造元です。
小倉醤油 — 1876年(明治8年)創業。100年クラスの杉桶を使い、12か月以上ゆっくり熟成させる天然醸造の濃口「五郎左衛門」を造っています。
宝醤油 — 1941年(昭和16年)設立。業務用のたれや液体調味料の受託製造(OEM/PB)を得意とし、銚子で生産を続けています。
レシピ例 — イワシのつみれ汁
銚子漁港はイワシ・サバ・サンマの水揚げで知られ、青魚と濃口醤油の組み合わせが日常の食卓になじんでいます。銚子の濃口を生かしたつみれ汁を紹介します。
マイワシ4尾を手で開いて皮と中骨を外し、包丁で粗く叩きます。
叩いた身に、すりおろし生姜小さじ1、味噌小さじ1、片栗粉大さじ1を混ぜます。
鍋に水600mlと昆布5gを入れて火にかけ、沸く直前に昆布を取り出してから、つみれをスプーンで落として煮ます。
長ねぎの斜め切り1/2本分と豆腐100gを加え、銚子の濃口醤油大さじ1と1/2、酒大さじ1で味を調えます。
器に盛って、刻んだ三つ葉と七味を添えれば出来上がりです。
もう一歩先へ
銚子の濃口は、刺身や煮魚など魚介の料理で違いが分かりやすい醤油です。木桶で自然に発酵させる小倉醤油や、そのまま食べられる発酵調味料を造る銚子山十など、規模の違う蔵を飲み比べ・味比べすると、産地のなかにある幅を感じられます。銚子の地魚と合わせて味わうのも楽しみ方の一つです。
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